73式

妙齢専業主婦の雑記帳である。文章を書く練習のため、ほぼ毎日更新の予定。

長すぎた春

 ひきこもり主婦の緊急任務としてネットスーパーを利用した。私はネギが欲しかった。「三本で百九十八円か……少し高いけどしょうがないか」と特売のネギを注文した。届いたネギは私の足よりも長かった。

 確かに私の座高は高い。小中学生の頃、身体測定で座高を測ることにものすごく不安を覚えていた。自分より背の低い子の方が足が長いのだ。悲しいが現実である。それを差し置いてもこのネギの長さはおかしい。私の身長は百六十センチあるが、並んでみるとウエストあたりまで確実にある。デカいならデカいって書いておいてくれよ……なぁに「私ぃ~身長小さくってからかわれるんですぅ~><」とのたまう160センチ超の女みたいな顔して普通のネギの覧に並んでいやがる。特売の横に特大と書くくらい簡単ではないか。このネギめ……まさか……背が高いことをコンプレックスに……? って萌えないから別に。私が萌えるのは大学生女子が一日の就職活動を終えて、きっちりスカートの中にしまっていたブラウスをでろんと引き出している油断した姿である。「特大」と自己申告しなかった怠慢は許さん。

 夫が帰ってくる前にコイツを標準のネギサイズに分解しなくてはならない……。決して彼は怒ったりはしないが、からかってくるのは必須。友人の多い夫は飲み会等で「いや~うちの嫁さんはテニスの王子様ガチ勢だよ。十年選手だもん」などと暴露する卑劣漢である。やめろ!! 十三年テニスの王子様が好きで何が悪い!! これにエピソードとして「バカでかいネギを買った嫁」が加わってしまう。ダメだ……これ以上恥を晒したくない……ネギ……勘弁してくれ……愛してるけど……長すぎる愛はちょっと……ごめん……私たち、馴れ合いすぎちゃったね……。