73式

妙齢専業主婦の雑記帳である。文章を書く練習のため、ほぼ毎日更新の予定。

変態というイメージ(一)

 どんな街にも個性的なファッションをした中高年の一人や二人が徘徊しているものである。

 私の地元では、全身にピンクの花柄衣装をまとった老人がチラホラ目撃されていた。私も一度見かけたことがある。噂通りのド派手な姿で、間近で見ても性別不詳の老人がカラカラと自転車を引いていた。自ら目立つ格好をしている割に、別に目立とうともしていなさそうな態度が印象的だった。その人を見かけると幸せになれるという、本人にとっては迷惑そうな噂まで勝手に流されていた。

 真冬の新宿駅で、白い短パンに白いハイソックスを履き、赤いタンクトップを着て赤いリュックを背負ったおじいさんを見かけた。その場にいた人の殆んどが「寒くないのかな……」という感想を彼に抱いていたと思う。

 季節は忘れたがあれは八王子だ。下を見て歩いていると、ふと銀色のミニスカートに網タイツ、銀色のエナメルブーツを履いた綺麗な足が視界に入ってきた。お、サイバー系ファッションとは珍しいな、と思って顔をあげて見てみると、銀色のストレートロングのカツラをかぶったオッサンだった。

 例を挙げればキリがない。原宿に行けば男性のロリータ姿なんかにも簡単に出会えると思う。そこらへんの女の子よりも綺麗な顔をしていて華奢なのに、やたら背が高くて膝がゴツゴツしているのが特徴だ。

 私にとって洋服は単なる「裸を隠すための布」である。いや、必要最低限の好みと節度くらいは弁えているつもりだが、ぶっちゃけ着れればどうでも良い。しまむらだろうがユニクロだろうが、ワーラブだろうがジーナシスだろうが、ツモリチサトだろうがズッカだろうが、見た目が似てればいっちばん安いものを選ぶ。あ、でも靴だけは明らかなパチモンは嫌だな……ちなみに冬のお気に入りはドクターマーチンの八ホールである。

 個性的な彼らにとって洋服とは何なのだろうか。私のように単なる布とは思っていないはずだ。まぁたまに「うちのおばあちゃんがテニプリ氷帝ジャージ着て畑仕事行っちゃったwwwww」みたいなツイートをツイッターで見かけるが、そういうのは例外としてだ。何らかの主張があってその服を選んで着ているのだろうが、残念ながら私の感受性が貧困なばかりに、その主張を上手く読み取ることが出来ない。どんなに気の知れた仲の相手でも、不躾に「何でその服を着ているんですか?」と聞けるはずもない。「好きだから」以外の返答が欲しい。テレパシー能力を磨いて勝手に心を覗くか、相手に催眠術をかけて聞き出す以外に方法はないものか。

(長くなってきたので続く)

盗聴

 ついつい他人の話を盗み聞きしてしまう。悪趣味なことは分かっている。しかし、これがめちゃくちゃ面白い。

 待ち合わせに遅れるという連絡が友人から来たので、時間を潰すためにタリーズに入った。ソファが向かい合う二人席を陣取り、一人でぼけ~っと、恐らくラテか何かを飲んでいた。

 ふと、隣の席の女性たちの会話が耳に飛び込んできた。

「ほら、私達って、普通の主婦じゃないじゃない?」

 一体彼女たちは何者だったのだろうか。その後すぐに友達が「ごめんごめん」とやってきてしまったので、結局正体は分からず仕舞だった。

 強烈に印象に残っているのは大学三年生の冬に遭遇した奥様達の会話だ。就職活動中の私は、面接前にドトール(たぶん)に入ってまたぼけ~っと何かを飲んでいた。

「うちの息子がさ、ラブレターもらってきたの。でも小五よ? 小五で恋愛なんか分かんないわよね」

「向こうの子もとりあえず恋愛ごっこがしたいだけで、相手なんか誰でもいいのよ」

「それにほら、あの子のお母さんて……ちょっと浮いてるじゃない? 私たちとは世代が違うからかもだけど」

「子どもの恋愛なんて、大学生になったって親が干渉しなきゃダメよね。男の子にマトモな判断力なんかないんだから。私達がしっかり選んであげないと、変な女に引っかかっちゃう」

 何とも恐ろしい会話だった……。名も知らぬ少年と未来の配偶者に幸あれ。

 私たち夫婦には子どもがいない。今のところつくる予定もない。夫は「子どもがめちゃめちゃ欲しいっ!!」というタイプではないし、私は私で自分の胎内から新たな生命体を産み出し、立派に育て上げる自信が全くない。まだ見ぬ私から生まれた私ではない人格を持った彼(もしくは彼女)の存在が恐ろしい。

「子どもなんてほっときゃ育つわよ。不良になっちゃったりおかしくなっちゃったりしてもさ、一本スジが通ってりゃそれでいいじゃん」

 義母談。良い義母に恵まれたものだ。

「ていうか、あんた子どもよりも先に自分の体のこと考えなさいよ。さっさと病気治して健康にならないと、妊娠もクソもないわよ」

 はい……頑張ります……。

思い出し愚痴愚痴(二)

 朝方まで起きていると人間ロクなことをしないものだ。

 人間の記憶って不思議だなぁ。父を通して私の怒り方について考えていたのに、下の記事を書くまで思い出しもしなかった嫌な思い出がずらずら書かれている。特に大学時代のサークルの話。単に思い出したから書いただけであって、そこまで根に持っているわけではない。でも当時はフオオオオオとなっていた。それは事実だ。

 無理やり(了)。